群淘汰と自然淘汰

子孫を多く残す事ができる性質であるほど集団に広まっていく自然淘汰には、全てに当てはまるわけではない。例えば、アリの社会では働きアリと女王アリがいて、子孫を残す役割を女王アリが担っている。自然淘汰の考えでは、生まれてくるアリは働きアリとしての性質がなくなり、徐々に女王アリ化されてしまう。

 また、オナガは敵の来訪を知らせることで群れ全体の生存を高める事を行う個体が存在する。その個体は敵に発見されやすいために捕食され、淘汰の対象となる。そのため、群全体が徐々に敵の来訪を知らせる個体がいなくなる。

 協力行為にはコストが生じるが、あとで返却されるために協力を行う考えを直接互恵性という。しかし、自分の協力行為に対して相手が無料で得る可能性(フリーライダーされる)のリスクがあるため、大きな協力ではなく、小さな協力を行い、フリーライダーを検知する。

 協力行為を行う事で自分の評判が上がるため協力を行う事を間接互恵性という。協力した個体を認識する事がができる認知機能と、環境が必要である。

 ヒトには協力した個体を認識する事はできるが、数十人〜百人程の規模の村社会では間接互恵性は働く。なぜなら、協力者が何丁目の○○さんであると認識する事ができる環境であるためである。それ以上の大きな規模の集団では、協力をしても集団に対する評判は上がりにくくなるため、間接互恵性は働きにくい。